ヘアドネーションの続き

ヘアドネーションとは、自らの髪を伸ばし、ある程度の長さになったら切ってもらって髪素材として寄付することでした。医療用かつらとして、病気で困っている人を助けようというボランティアです。日本中に賛同する美容院があり、連絡すれば適切なカット方法で切ってもらえます。

さて、では、ボランティアではなく、営利目的で髪を売ることはできるのでしょうか。

結論から言えば、NOです。日本では髪を集めて工場に納める流通システムはありません。頻度の少ないことのために、流通システムを維持することはできないのです。このため、髪を切るついでに小遣い稼ぎ、ということはできません。

髪は主に途上国で若い女性から買い取られます。価格の点もさることながら、先進国は髪にいろいろや薬品を使ったり、表面のキューティクルを傷めるような習慣が多いので、かつら素材に向かないのです。途上国でも都会ではなく、辺境の貧しい村が買い取りのターゲットになっています。

 

かつらの脱毛

カツラの毛は人毛、人工毛いずれの場合でも1本1本ベースに結んであるが、結び目が黒い点として目立たないように化学的に色を抜く処理を施す。具体的には酸化剤を用いて色素を壊す作業を行う。
酸化剤は、色を抜くだけでなく毛の組織を破壊する働きを持つため、カツラの毛の結び目は髪の強度が落ちており、使用に伴って切れることがある。もともと脱色は極めて強い化学的な処置であり、人毛の成分がノーダメージというわけにはいかないのだ。その意味では、脱毛のリスクと、脱色のメリットを秤にかけてどちらを重要視するか、ユーザが決める必要がある。一般には、かつらを利用する初期には脱色を優先し、ある程度慣れてきたら寿命を優先するために脱色はなしにするか、弱い脱色とするケースが多いようである。

強度の落ちた髪は脱毛のリスクがあるが、これが顕在化するのはブラシが強く当たる前頭部であり、かつらの寿命を規定する主要因となる。対策としては、ブラシはゆっくりと当てる、ブラッシングを必要最小限に留める、などがある。
また、かつら用のブラシとして、髪への負担が少ないブラシが売られているが、当店ではその効果はあまり現れず、否定的な立場である。低負荷タイプのブラシとしては、すべりをよくするタイプ(これは有用性を感じる)、マグネットをつけたタイプ、ピンを細くしたタイプ、携帯のバイブレーション機能で使われるモータを内蔵した振動タイプなどがあるようだ。

また、特に寿命を優先するカツラの場合、最初から脱色を行わないという指定を行うと、この問題は起きなくなる。
髪の根本の脱色は実際にはそれほど重要なわけではなく、できれば脱色をしない方が、かつらの寿命にとっては有利である。

髪の長さの注文方法

カツラの髪の長さは標準は10cmから15cm。この範囲であれば追加料金は発生しない。
これ以上の長髪が必要な場合は5cm刻みで指定できるが、追加料金が発生する。
男性用カツラでは、12.5cmが標準的な髪長さになる。一般的な男性ヘアスタイルならこの長さで適合する。

なお、髪長さを細かく指定してもそのままで着用はできず、カツラの髪カットは必須である。

最初は心配でつい長い髪を指定しがちだが、あまり長すぎるとカットしなくてはならない量が増えるので美容師が嫌がる。慣れてきたら適正量を探したい。
工場としても、長い髪は価格が高いので、あまり使いたくないのだ。
それに加え、長すぎる髪は、最初の装着のとき、テープに巻き込んだり、接着剤に張り付いたりと、トラブルの元になる。何事もほどほどがよい。

生え際の密度

一般に、髪はフロント生え際では髪量が少なく、後頭部に行くに従って髪が増えている。
そこで、この髪分布を再現することで、よりカツラを自然に見せることができる。

特に理由がない限り、生え際の髪を減らす「自然な生え際」を選択しておきたい。
これは生え際から数センチ程度、髪の密度を減らして製作する、という意味である。
なお、この髪を減らす量・範囲は小さく、これを選択したことでカツラ全体が薄く見えるという心配はない。

全周囲縁ありのカツラの場合、生え際を見せないことが前提であり、縁が見えないように生え際も髪量は減らさない。

つむじ

自分のつむじをカバーするカツラの場合、必ずかつらの側にも「つむじ」を1箇所設定する必要がある。

つむじとは、髪の流れが変わる点のことで、髪を四方八方に流す起点となる。
原則として、つむじの位置は製作時に決まり、いったん出来上がればドライヤーなどを使ってもつむじ位置を変えることはできない。
間違えやすいが、分け目位置は自由に変えることができるのに対して、つむじ位置は固定となるので注意が必要だ。

つむじをなしで作ることもできるが、その場合は、髪を四方八方に流す起点がないわけであり、当然、髪を一方向(通常は前方向)に流すことになる。

フロント用のカツラでは、つむじを付けず、すべて前に流すタイプが普通だ。
また、特殊なものとしては傷跡を隠すためのカツラとしても、つむじなしが使われる。この場合は、その場所にあった方向に髪を流す。

いずれにしても、『自分のつむじをカバーする場合は、カツラにもつむじあり』、『自分のつむじをカバーしないなら、カツラもつむじなし』、と考えれば間違いない。
もし、つむじをカバーするカツラなのにつむじなしで製作してしまうと、カツラの髪はすべて一方向へ向いているわけだから、自毛との境界に困る。つまり、カツラの髪の上流側の端部では、カツラの髪もないし、自毛もない、という状態になってしまう。逆に、フロント用に対してつむじを作ると、前頭部につむじが生じて奇妙なことになる。

なお、つむじには人工皮膚を入れるわけではないため、レースが見えることになる。
レースは薄いため、一般に、レースが肌に密着していれば見えにくいが、それでもつむじ部分でレースが見えるのを気にする方もいる。
こうした場合、つむじだけ髪量を多くするよう指定した方がよいだろう。

コンディショナー

カツラをシャンプーして洗ったら、必ずリンスあるいはコンディショナーで仕上げる必要がある。
そのままにすると、髪がごわついて絡みが発生してしまう。バレないかつらとするためにも、手入れは大切だ。
コンディショナーには洗い流すタイプと洗い流さないタイプがあるが、カツラを装着したまま洗う際は前者をお薦めする。
カツラを外して洗う場合は、どちらでもよいが、洗い流さない方が効果があるのでお勧めだ。
男性の場合、洗い流さないコンディショナーは馴染みがないと思うが、女性用では広く使われている。
最初は、洗い流さないというのは違和感があると思うが、すぐに慣れる。

コンディショナーはさまざまなタイプがあるが、ダメージヘア用のものが髪表面の傷(からみの原因)を修復し、効果的である。毛の表面に膜を作り、すべりをよくする働きがある。毛のダメージとは表面が荒れることなので、こうした修復作用は有効だ。

かつら専用品も発売されているが、一般用でも問題ない。

カツラの髪が傷んできたときにはヘアパックを使うとよい。
コンディショナーに比べてより保修効果が高い。
ただし、毛絡みが発生してからではあまり効果がなく、その前に予防的に使うのがお勧めである。
ヘアパックは大手薬局などで手に入る。

毛を染める

人毛から作られたカツラは、染色剤で染めることができる。レミーヘア、バルクヘアーなども同じだ。
ただし、色が濃い方向へ染めることは可能だが、薄い方向へは染めることはできない。
毛を濃い方向に染めるときは、市販の「黒髪戻し」などの商品名で売られている毛染め剤を利用する。
ただし、薬液に浸す時間は説明書と異なる場合がある。説明書では、未加工の人毛を想定しているため、加工した人毛では染めるスピードが変わるのだ。
そこで、一気に最後まで染めずに、途中で髪の一部を拭き取り、染まり具合を確認する必要がある。
この時、蛍光灯など人工照明下だと、違った色に見えることがあるので、バレないかつらに仕上げるためにも、日中、自然光の下で確認したい。

カツラの髪は、洗浄を繰り返すとだんだん色が薄くなることがある。
日頃、着色剤入りのシャンプーやコンディショナーを使用することで、予防することができる。
もっとも、こうした染めるタイプのコンディショナーを使わなくても、貼るタイプのカツラの場合はその寿命を考えると、1回染色する必要があるかどうか、というくらいである。

白髪は人工毛髪でできているので、いっしょに染まってしまうという心配はない。
染色剤は、髪の成分に反応して色を変えるため、天然毛髪(人毛)以外の部分は染まることはないのだ。
同じ理由で、レースや縁が染まるという心配はいらない。

一方、爪は髪と成分が似ているため、手袋なしで染めようとすると、爪まで黒くなる。注意が必要だ。

髪素材  色コード

カツラの髪素材について、色を指定する方法として、色コードを指定する方法がある。

真っ黒な髪が#1であり、明るくなるにつれて、#1B, #2, #3 ,…と数字が大きくなっていく。

ただし、この色コードは、多くのカツラ店で使用されているものの、規格が決まっているわけではない。
このため、同じ色コードでも実際の色は店によって異なる。特に明るい色(茶髪)では、カツラメーカーによって色合いの差が顕著になる。

日本人では#1がやや多いが、#1Bも多い。#2以上は、日本人の髪ではあまり見られず、染めた人向けである。
なお、黒々とした髪は、カツラっぽく見える原因の一つである。
もし、髪色がちょっとでも明るいなら、#1Bを選んだ方がよいだろう。
屋外に長くいる人なら、紫外線のため頭頂部の髪の色が少し抜けて明るい色になっているのは、よく見られる。
したがって、頭頂部のカツラ部分の色が僅かに薄いのは、決して不自然ではない。
逆に頭頂部だけ色が黒いのはちょっと不自然だ。バレないかつらとして注意する必要がある。

なお、それでも明るい色に抵抗があるのであれば、#1と#1Bを半分ずつか、あるいは任意の割合で混ぜる、という指定もできる。

もし、#1Bでオーダーして、実際にはもっと黒い髪が欲しかった場合、市販の毛染め剤で、カツラを染めて色を濃くすることは可能である。
しかし、#1でオーダーすると、髪の色を薄くすることはできないため、色は変えられないことになる。
「カツラの髪は薄い方向へ染めることはできない」という点には十分留意されたい。

髪素材 チャイニーズレミー

チャイニーズレミーとは、カツラに使う毛髪素材の名称である。
レミーヘアーとは、人の毛髪を採取した後、キューティクルをできるだけ剥がさずに元の素材を活かしたタイプの髪素材を意味する。自然な反面、元の髪の性質が強く現れる。主に女性用かつら用の髪素材として流通しているため細い髪がほとんどで太い髪は手に入りにくい。これはチャイニーズレミーの髪素材を提供するのはほとんどが女性であるためだ。対照的に、インディアンレミーでは男性からの供給があり、太い髪も手に入りやすい。

チャイニーズレミーは、インディアンレミーより日本人の髪の感じに近い。
このため、日本で販売されているかつらは、レミーの場合チャイニーズレミーが使われることが多い。

レミーの特長として、風合いが髪に近く、自然なスタイルが作りやすいという点が挙げられる。
このため、標準ですべての髪をレミーとしているカツラメーカーもある。
また、結び目の脱色がしやすいという特長がある。これもレミーが有利な理由の1つである。
一方で、髪の性質が安定しないという欠点があり、しばしば、前回のかつらと髪質が違う、という指摘となる。

かつらのブラッシング

自毛の場合、ブラッシングは髪型を整えるだけでなく、皮脂を髪全体に行き渡らせる、血行を良くするというメリットがあります。そこで、ある程度ブラッシングは必要ですし、実際に皆様はそのようにしています。

しかし、カツラの場合、ブラッシングは最小限にする必要があります。
つまり、髪型を整える以外の目的でブラッシングする意味はありません。
それどころか、髪に負担をかけるため、過度のブラッシングは寿命を短くする元になります。

カツラにブラシを当てるときは、ゆっくり、ゆっくりと当ててください。
自毛のときのようにスピードを速めて当てるとカツラの負担になります。
特に、髪に引っかかったとき、力任せにブラシを進めなると、大きなダメージになることがあります。

カツラに使用する場合、あまり目の細かいブラシはよくありません。
目の細かいブラシは抵抗が大きく、かつらの髪とレースに大きな負荷をかけるからです。
毛の表面を荒らさないように保つことが、バレないかつらの第一歩です。
抵抗を減らすため、毛先を振動させるブラシもお勧めです。
一方で、磁石つきなど怪しげなブラシも市販されていますが、これは効果はありません。
特に高価なブラシは必要ありませんので、毛の粗いブラシをお求めください。
また、毛にスプレーをかけて通りを良くするのもお勧めです。