接着剤

接着剤は、カツラの装着時に使用する薬剤だ。縁がない部分、つまりレース部分を頭皮に貼るのに使用する。
使用上の注意として、カツラ側ではなく、頭皮側に塗ること。カツラ側に塗る方法もないわけではないが、べとつきが髪に広がりやすいのでお勧めしない。

自分だけで施術する場合、かつら側に塗るケースはまずないはずだ。

接着剤による装着はテープと比較して自然だが、髪がべとついたり、使用後の手入れが面倒という欠点がある。
屋外で過ごす時間が長いときなど直射日光を浴びるときは、テープだと反射が気になる場合があり、そういう場合には接着剤の方が、バレないかつらにするために有用だ。

海外から安価に個人輸入することもできるが、慣れるまでは相談しやすいということで国内販売業者から購入したほうがよいだろう。

よくある質問は「接着剤を肌に塗って大丈夫か」というものであるが、心配はない。
人体用に設計された商品であり、一般的な肌の人であれば長期にわたって使用しても問題ない。
ただし、アレルギー体質や肌が弱い人などは、事前に接着剤の販売者に相談した方がよい。

髪の根元の脱色

かつらの髪は、土台とでも言うべき「ベース」に結びつける。このとき、ベース上には必ず結び目ができる。
結び目は髪が丸い輪となるため、黒い点として見えることがある。

近くで見なければわからないとはいえ、やはり気になるということで、少しでも結び目が目立たないようにする
加工をする。
これが、結び目の脱色するだ。結び目があっても色が薄ければ見えにくい。
これによりバレないかつらとして完成に近づく。

脱色は、髪を植える工程を終えたカツラに対し、結び目を薬品に浸す。そうして髪の色素を抜くことで色を薄くしている。
この作業では、カツラ製造工場によって脱色の強さに差が生じる。
しかし、脱色がよいほど、よいカツラか、というと必ずしもそうではない。
実は、髪を染める色素にはいろいろなタイプがある。耐久性を重視したものと、そうでないものがあるのだ。
耐久性に優れる染色剤は、脱色も効きにくい。
こうした染色剤に対しては、市販の脱色剤を用いた脱色ではあまり効果がない。
優れた脱色を行う工場は、もともと耐久性の低い染色剤を使っている可能性が高いのだ。
この場合、使用に従って髪の色が早く落ち、染め直しが必要になる。染め直しを行うと、根本の結び目まで染まってしまうので(結び目だけ髪染め剤をつけないのはとても難しい)、結局ぼつぼつが目立つ。

この脱色過程では、色素だけでなく、髪そのものにもダメージが及ぶため、このような問題が生じる。
脱色を強くすると髪の結び目が切れやすくなり、すぐにかつらがスカスカになって寿命が短いという問題があるのだ。

このため、脱色は適度な強さにとどめており、強い脱色はお勧めしない。

かつらベース

カツラの構成要素は2つある。それは、1つは髪、もう一つは、髪を結わえ付ける「土台」である。
本項目では、この土台、つまりベースについて解説する。

いわゆる「増毛」、すなわち、髪素材(髪単体)を購入しそれを自分の毛に結びつけるのは例外であるが、
それ以外の手法を使おうとすると、必ずベース(土台)が必要になる。
ベースなしに髪を固定することができないためだ。
ベースは様々なものがある。代表的なものは、次のとおりである。

・糸状
造りが簡単なため昔から用いられており、かつらというより増毛の一種と考えた方が近い。釣り糸、テグスのような透明な糸に、髪を結んだものである。この透明な糸の両端を、自毛に結びつけたり接着剤で接着する。そうすると、その間の線空間に髪が装着される、という手法である。この手法では、透明な糸がベースになる。
広い面積をカバーする必要があれば、この糸状の素材を並行に何本も貼っていく。
施工に手間がかかるが、素材としては糸を貼る感覚を調整することでかなり広範囲の毛量に対応できる。
その意味では中小のかつらサロンに向いたアイテムである。

・網状
カツラ用に広く使用される素材。かつらと言えばこのタイプを指すことが多い。
数ミリから1cm程度の目の粗さの黒い網を、頭の形状に合わせて半球上に整形する。
この網に髪を結わえ付けるのである。
網がベースとなる。
網が黒いのは、髪が透けて見えた時にベースが見えないよう、髪の一部に見えるようにするためである。
これはバレないかつらとして重要だ。

・メッシュ状のもの
上述の網タイプのベースに対し、厚みを薄くして、また肌色(まれに黒色も使用される)のメッシュ状にしたものが、
貼るタイプのカツラである。メッシュは数ミリ以下の目であり、網タイプに比べて非常に細かい。
また、繊維も太さもかなり細く、見えにくさに優れる。

・特殊形状
網状でありながら、編み目を極端に粗くしたタイプもある。
これは、自毛が少しだけ減った状態で使用される。したがって、自毛がかなり少なくなった状態では不適合である。
また、ベースを見せないために、相当多い髪量まで増やすことになる。
女性の場合、高齢でも多い髪が不自然ではないため、よくこうした形状が使われる。
男性の場合は、年に見合うよう髪量を減らした方が自然なので、このタイプはあまり使われない。

人毛(天然毛髪、バルクヘアー)

バルクヘアーとは、主に途上国の街中で専門業者が買い集めた人の毛髪に対し、キューティクルを取り除き脱色してから必要な色に染めた髪素材を指す。
かつらに使用する髪素材として最も一般的に使用されており、カツラで「天然毛髪」「人毛」と言えばこれをことだ。

カツラ素材のファーストチョイスであることから最も一般的に使われ、流通量も多い。一般的な黒や茶はもちろん、特殊な色の髪も販売されている。
供給源は途上国で、中国の女性やインドの男性から提供された髪を原料としているが、当店のかつらでは中国製を使用している。
天然毛髪の欠点として、「絡み」と「色落ち」がある。
絡みとは、シャンプー時など髪をくしゃくしゃにすると、髪が絡み合ってダンゴ状態となり、ブラシが通らなくなる状態を言う。髪の表面の荒れや静電気が原因で発生する。初期の段階ならカツラ用の毛絡み防止剤で改善できる。
いったん発生してしまった場合、ヘアパックで表面をなめらかにすれば改善する場合もある。
ただし、特に表面が損傷した毛ではあまり効き目のないことも多い。発生する前に髪表面を傷めないようにするのが有効である。

色落ちは、染色剤が汗やシャンプー、紫外線によって抜けたり薄れてくる状態である。
数年も使う従来型カツラの場合は定期的に染め直す必要があるが、貼るタイプのカツラはベースの寿命がそれほど長くないため、染め直しが必要になる前に寿命となる場合も見られる。
染め直す場合は、市販の毛染め剤を使用して自分で作業するか、専門店に依頼する。
特に黒髪は染の進み具合の調節も簡単で、自分で作業することは十分可能だ。ただし、毛染め剤で洗面所や浴室を汚さないようにしよう。

カツラ用素材としては、これ以外に「人工毛髪」がある。
これは化学繊維でできた髪であり、同一品質の髪が大量に生産できることから、量の確保が必須となる大手カツラ会社では好んで使われる。
近年は品質も向上してきたとはいえ、まだ自然さでは天然毛髪にかなわないため、当店では推奨しない。
ただし、大手では独自に開発したかなり天然毛髪に近い高級製品も販売している。ただし、こうした高級人工毛髪は特許で保護されていたり、自社専用の差別化アイテムと位置づけて一般には流通させない場合が多く、権利を持つカツラ会社以外では使われることはない。

かつらに使う髪素材

カツラの髪としては、ヒトから採取した髪である「人毛」あるいは「天然毛髪」と、人工的に作り出した髪である「人工毛髪」がある。

人工毛髪とは、ヒトの毛髪に似せて作られた化学繊維でできた髪で、大量生産されている。
人形や、カットの練習用に美容師・理容師が使う安価なものもあれば、できるだけ人毛に似せた高級品もある。
天然毛髪より耐久性に優れるが、自然さは劣る。

特に、直射日光があたる屋外や、強いスポット照明のある場所では自毛との境界で色が違って見えることがあり、注意を要する。また、人工毛髪は熱や摩擦に弱いため取り扱いには注意が必要だ。
例えば、カツラを装着して寝る際に、激しく頭を枕にこするクセがあると髪が劣化することがある。
人工毛髪のかつらは、長耐久であることから1年以上使うことを前提にしていることが多く、したがって摩擦によるダメージは損傷範囲が広く問題になる。

もともと、日本の大手のカツラメーカーでは、安定して大量の髪を手に入れる必要があったため、
同一品質のものが簡単に製造できる人工毛髪を開発したという経緯がある。
その甲斐あって、大手の作る人工毛髪はとても精巧にできている。
一方で、こうした高級人工毛髪はオプション扱いになっていることがあり、気をつける必要がある。まずは安い製品の価格を提示して安心させた上で、安い製品と高価な製品を手に取らせて違いをアピールし、結局高価な製品を契約させる、ということが普通に行われているのだ。
カツラサロンでカツラを購入する際は、自然な人工毛髪は標準価格に含まれているのか、それともオプションで別料金なのか最初に確認するべきである。
悪質なかつらサロンでは、価格表を見せず、言い値となる場合がある。客の懐具合で金額がかわるのだ。価格表を見せないサロンは要注意だ。

「全周囲縁あり」とは

貼るカツラでは、多くの場合、補強のための「縁」を、横と後ろにつける。
縁とは、かつらの一部(まれに全部に)裏打ちする、ポリエステル製のシートである。
ポリエステルシートを裏打ちすることで、ベースに強度をつけ、またテープを付けるための土台となる。
レースはメッシュ状でテープをつけようにもテープと接触する面積が少ないため、なかなかうまくつかない。
これに対して縁があれば、なめらかな表面を持つシートなので、テープがよく接着する。
かつらの使い勝手が大きく向上するので、迷ったら縁ありを選択してほしい。

横と後ろだけでなく、前も含めた全周囲に縁を付けることも可能である。
これは「全周囲縁あり」と呼ばれるカツラである。

全周囲縁ありのかつらにすると、レース部を接着する必要がないため、カツラ着脱が楽になるという特長がある。
また、フロントにレースがあると、レースはもともと強度が弱く損傷しやすいのに加え、
フロントはブラシがあたる頻度が高く、レースも傷みやすいというデメリットを甘受する必要がある。

一方で、フロント生え際を見せることができないため、分け目をはっきりつけることができないという欠点はある。
どうしても分け目を付けたいという場合は、カツラの髪量を相当多くする必要がある。
また、分け目がない場合でも、髪量の少ないカツラにすると縁が見えるため、ある程度の髪量は必要である。

最初に始めるかつらは、無難なところから始めるためにもフロントには縁を付けないほうがよいだろう。
ある程度貼るカツラに慣れてきてから、このタイプにチャレンジしたほうがよい。

また、仕事や学校がある時には自然さを優先し、バレないかつらとして「横と後ろに縁あり」のかつらを装着し、
オフタイムには扱いが楽な「全周囲縁あり」のカツラを使用するのもよい方法である。
全周囲縁ありのカツラは、移動ピンを使うことによりピン留めのカツラとしても使用できる。
(ただし、髪を剃る範囲が違うため、ピンをつけたり外したりして使うことはできない。
いったんピン留めカツラとしたら、その後もピン留めとして使う必要がある)

植毛 その2

自家植毛は、元気な毛を毛包単位で移植します。
メスを使わない方法が広く行われており、安全性が高くなっています。
メスを使わないのにどうやってグラフトを採取するかと言うと、「パンチブレード」と呼ばれる機械を使って毛根を一つ一つ頭皮から繰り抜きます(パンチ)のでパンチグラフト法と呼ばれたりもします。

薄毛部分への移植も「パンチブレード」使い、0.6~0.8ミリ程度の極小の穴を一つ一つ開け、その穴に採取した毛根を植え付けていきます。

この方法は頭皮を切開しなくてすむため、傷が小さくて済みます。
麻酔が切れた後も痛みは少なく、回復も早い方法です。

なにしろ、数日後にはほぼ通常の生活に戻ることができます。
傷口が目立たなくなるまでは数週程度。かなり短い期間です。

また、メスで切開しないため、抜糸がありません。
遠方の病院で施術する際には重要なポイントになります。

一方で、正確に毛を切り出さないといけません。切り出す際に根毛を損傷させるとアウトです。また、位置決めを1回1回行うので、手間はかかります。

この問題を解決したのが植毛ロボット「ALTUS(アルタス)」です。

ALTUS(アルタス)は毛株を採取するためのロボットで、
側頭部・後頭部の採取部分を高速撮影し、画像解析して、毛の密度や向き・角度を把握、その情報を元に、ロボットアームがミクロンレベルの精度で摘出するので、手作業よりも高品質なグラフトを採取できるようになりました。
また、精密なだけでなく1時間に500株以上のスピード摘出が可能なので生着率の低下も防ぎます。

摘出の際に最適な間隔をARTASが計算するのでドナー摘出部分がムラにならない、施術者の人為的ミスによるリスクが低いという品質管理上のメリットもあります。

植毛

自毛植毛とは、自分の別の場所にある髪をとってきて、薄毛になっている部分に植える方法です。

他の薄毛対策とくらべて、次のメリットがあります。

生着率が高い
自毛植毛に使用する毛髪は、生える力がある、つまり男性型脱毛が起きにくい側頭部や後頭部の毛髪です。
移植した毛髪は一旦抜け落ちますが、数ヶ月で発毛が始まります。
毛乳頭が移植した部分の頭皮の毛細血管や神経と結合することで生え揃います。
毛乳頭とは毛髪の成長に必要な栄養を取り入れる組織のことです。

再び生える現象を生着と言い、現在の生着率(定着率)は高いと言われています。
何しろ、自分の毛。拒絶反応(身体が異物とみなして抜けてしまうこと)が起きないから実現できるのです
この高い生着率は自毛植毛ならではのメリットです。

さらに、移植される毛髪は、もともと脱毛しにくい部位であり、男性型脱毛症の影響を受けにくい毛髪なので、生着すれば自分の髪として生涯生え続けます。

自然な仕上がり
自分自身の毛髪なので、髪の色や髪質が周りになじみやすいのも特徴です。
驚くべきことに、年齢を重ねると白髪にもなってきて、まったく自毛と変わりません。
また株分けした毛髪を移植する場所によって使い分けることで、より自然な効果を作り出せます。

本数の多い株はボリュームは出せるが自然さが欠ける、1本の株では自然だがボリュームを出しにくい、などの効果のため、併用されることもあります。

男性ホルモンの影響を受けにくい
前頭部や頭頂部の薄毛の原因の1つに男性ホルモンが挙げられます。

テストステロンが5αリダクターゼによってジヒドロテストステロンに変異します。 このジヒドロテストステロンが毛乳頭の男性ホルモン受容体と結合することで髪が育たず脱毛してしまうのです。
実は自毛植毛に使われる側頭部や後頭部の毛乳頭には、男性ホルモン受容体がほとんど有りません。

そのため移植後も男性ホルモンの影響で抜けることなく育つのです。

かつては人工毛を植える手法が一般的でしたが、今ではあまり使われません。
ばれない、という点ではよいものの、人体へのマッチという点で大きな課題があるからです。

AGA

男性特有の脱毛症(ハゲ)のことをAGAと言う。andorogenetic alopeciaが元の単語。
主に30歳以降の男性に多くみられるが、20代前半でも発生することがあり、若年性脱毛症と呼ばれる。
男性5-6人に1人は男性型脱毛症と言われており、日本では1200万人前後と推定されている。
ヘアサイクル(周毛期)の成長期が短くなることで発症し、主に前頭部と頭頂部の髪が薄くなるという特徴がある。
男性ホルモンとその受容体が大きく関わっていると考えられているが、正確なところはまだ解明されていない。
近年、盛んに研究が進められているものの、全容解明には至っていない。

男性型脱毛症は、いったん発症すると一定の範囲までどんどん拡大していく。
一定の範囲とは、前頭部および頭頂部に限られ、横は後ろの髪は元気なことが多い。
前頭部あるいは頭頂部のどちらか一方だけ進行する場合と、同時に進む場合がある。
これにより様々なパターンが分類されている。

部分カツラの利用の多くは男性型脱毛症である。
横と後ろは髪が残るため、自毛にピン(金具)で留めるカツラも利用できる。

急速に進むことがある円形脱毛症と違い、進行は比較的ゆっくりである。
このため、なかなか気づきにくく、床屋から「頭頂部が少し弱っていますね」などと言われて始めて気づくこともある。

近年では、カツラ以外の対処法として、治療薬も発売されている。
ただし、男性型脱毛症は病気ではないため、薬は根本的な治療ではない。
飲んでいる間、脱毛を進行させる体内システムの働きを阻害するだけである。従って、飲むのをやめれば、再び進行する。
このため、薬を開始するときは、いつまで続けるのか、例えば結婚するまでとか、40歳までとか、何らかの形で決めておいたほうがよい。

男性型脱毛症の治療を行うときは、発毛を謳ったいわゆる発毛サロンや、カツラサロンではなく、病院に行くことをお勧めする。サロンは常に継続することを強くすすめるため、撤退の時期を誤り、支払いが雪だるま式にふくらんでいく。

スイスレース

スイスレースは、カツラのベース(土台)に使用されるレース素材の一種である。
スイスという名前が付いているが、スイスで生産されているとか、発明された、とかいうわけではなく、単なる商品名である。

レースは厚みによって、薄い方ものから順に「スイスレース」「フレンチレース」「モノレース」の3種類がある。
厚いほうが耐久性があり、またある程度の固さ(曲がりにくさ)があるため、使い勝手がよい。
一方で、貼るかつらでは、髪だけが見えて髪が結び付けられている土台は見えない、という状態が望ましい。
このため、薄い方が自然に見え、バレないかつらとなる。

スイスレースは最も薄いレース素材であり、自然さを優先するカツラに使用する。
反面、耐久性は劣る。

こうした特性から、初心者よりは上級者向け、常用よりはここ一番のピンポイントでの使用向け、という位置づけになる。
一般には2ヶ月程度で寿命になり、更新が必要となる。

フロント用の小さなカツラでは、地肌が見えやすいのでスイスレースを利用した方がよい。
こうしたケースでスイスレースの特長である、薄くて見えにくいというメリットが重要となる。

スイスレースは耐久性に劣るが、丁寧に使えば寿命は伸びる。まず、無理に剥がさないことが重要である。リムーバーを使って接着剤を弱めてから剥がさないと、たちまち破れてしまう。

こうした点に注意して、丁寧に扱えば、かつらとしては最高のパフォーマンスを引き出すことができる。