毛髪の供給源とは

かつらバックナンバーVol.2

2. 毛髪売り

かつらの歴史は古く、そして昔は人工毛髪なんてありませんから、 当然、すべてのかつらは天然毛髪で作られていました。

カツラの髪の材料としては、人から取った人毛(天然毛髪)と、石油から作る人工毛髪があります。 大手メーカーでは優れた人工毛を開発していますが、これらは高価であり 世界的に見れば天然毛髪が広く使用されています。
かつらに使用する天然毛髪は、どうやって入手するかご存じでしょうか。

昔から、カツラ用として髪を買い取るという商売が世界中にありました。
「夫や家族を助けるため、女性が自慢の髪を売る」という話は世界中の民話や小説に登場します。 例えば、O.ヘンリの「賢者の贈り物」は、夫が妻に櫛を買うため時計を売り、 妻は夫に時計の鎖を買うため髪を売る話です。
国語や英語の教科書にもよく使われるので知っている人も多いでしょう。

商人に自分の髪を売る、というのは、途上国の貧困層では今でも現金収入を得る手段となっています。 確かに、数年に1回、何もしなくても現金になるのですから売る側、買う側双方にとって悪い話ではありません。

しかし、中国でも都市部では裕福な人々が増え、自分の髪を売る人は減っています。
またパーマや髪染めの習慣が広がってきたため、かつらに使えるような商品価値のある髪が減っているのです。 近代化、高所得化は、こんなところにも影響を及ぼしています。
しかし、それも富める都市部の話、都市から遠く離れた農村では、今なお盛んに髪の売買が行われています。

かつら商人から委託された髪の買い取り屋は、貧しい農村を回っては女性から髪を買い取っています。 中国では未だに都市部と農村部の格差が激しく、農村部ではこのような商売が成立するのです。

価格はいくらくらいか想像できますか? 相場はだいたい100g当たり千円ほど。 ちなみに、男性用の部分かつらでは大きさや髪密度によってかわりますが、1個につき50gくらい使います。 つまり、カツラ1個にかかる髪の買い取り量は500円くらいとなります。 1回のこの10倍くらいの量を採取するので、5000円ほどの支払いとなります。 中国では物価価値は日本の8倍ほどなので、日本での4万円くらいの感覚でしょうか。 高いですか?安いですか?

かつらの需要が多い長くてストレートな髪ほどよい値がつきます。
中国の農村部ではストレートな髪をしている人が多く、日本でかつらに加工される髪の過半はここで調達されます。 ストレートは加工も楽で、オールマイティに使えます。

中国では男性が髪を伸ばす習慣はないため、男性の髪はほとんど手に入りません。
男性用のかつらでも、多くの場合女性の髪で作ります。 確かに女性の髪は細い傾向がありますが、男性の髪と本質的な違いがあるわけではなく、 カツラに加工してしまえば男性女性は問題にはなりません。 むしろ女性の髪の方が、髪の断面が真円に近く、かつら素材としては扱い易いです。 加工してからも、真円の方が妙なクセが出ず扱いやすいです。

一方、インドでは、男性が髪を伸ばし、しかも宗教上の理由である時にばっさり 切るという習慣があります。このためインドでは大量の男性の髪が供給されます。 これは供給源としては大変魅力的なのですが、残念ながらインドの人々の毛は、 断面が楕円で、カールがかかった髪になります。たとえストレートパーマをかけても 我々東アジアに多い、断面が真円の髪のようにはなりません。

インド産の髪はかつらの髪の素材としては欧米でよく使われますが、日本ではあまり使用されません。 日本ではそのほとんどを中国の原料に頼っています。
カツラは、素材も加工も中国頼み、ということになります。 中国の景気動向や特に通貨の切り上げは大きな影響があります。